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アメリカにおけるヘリウムガス関連の報道レポート (2019.4Q)

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最近、ヘリウムガス不足に関するニュースがたびたび報道されるようになりました。ヘリウムガスは「バルーンを膨らませるための気体」として有名ですが、あらゆる物質の中で最も沸点が低く安定した燃えない物質であるため、冷却剤としても重宝されています。その結果、今回のヘリウムガス不足によって医療や工業など多方面に影響が出ており、主要原産国のアメリカ国内でも大きな話題となっています。

報道されている「ヘリウムガス不足」とは?原因や影響を解説

今回の記事では、ヘリウムガス生産量世界第1位のアメリカが、この度のヘリウムガス不足問題をどのように捉え報じているかまとめました。アメリカの視点から見た原因、現状、対策、そして2020年以降の見通しについて、現地報道を引用・翻訳してお伝えします。

アメリカ市民がヘリウムガス不足を身近に感じる時

ホームパーティー文化を重視するアメリカでは、誕生日、卒業式などのイベントにバルーンをたくさん飾って祝う習慣があります。そのため、バルーンを宙に浮かせるためのヘリウムガスもごく身近なものとして捉えられており、広く親しまれています。

近年、ヘリウムガス不足を受けてバルーンの値上げに踏み切るショップが出てきました。普段の生活では実感しにくいヘリウムガス不足ですが、アメリカ市民は「バルーンを買う際に以前より値段が高いことに気づき、初めてヘリウムガス不足を実感した」という人が多いようです。インタビューに対して「今年のパーティーでは、バルーンを買うだけの予算があるか熟考したい」とコメントする人もいました。※1

アメリカにおけるヘリウムガス不足の原因は?

アメリカには、政府管理下にある世界最大のヘリウム貯蔵施設をはじめ、ヘリウムガスが採取できる天然ガス井戸が複数あります。しかし、既存の井戸の枯渇、シェールガスの開発に伴う天然ガス採掘量の減少といった理由から、アメリカ国内におけるヘリウムガス生産量は減少しつつあります。一方で、世界的な需要は増え続けており、「ヘリウムガスの供給が需要に追いついていない」というのが今回の問題の根本にあります。

ガス供給会社Norco社の副社長Robert Gerry氏は、「今回のヘリウムガス不足の原因は、純粋に需要が供給を上回ったことにあります。これまでアメリカは国内で生産されるヘリウムガスを利用してきましたが、ヘリウムガスを採取できる井戸は減ってきています。そのため、ヘリウムガスを必要とする企業の多くが、ストックを確保するためにカタールやロシアといった国外からの輸入を考えているのです」と述べています。※2

医療業界や研究開発分野へ波及するヘリウムガス不足の影響

あらゆる業界の中で、ヘリウムガスを最も多く必要としているのが医療業界です。メディカルグループSinging River Health SystemのディレクターLance Rouse氏は、現在ある需要の40%が医療業界によるものだといいます。

ヘリウムガスは、MRIをはじめ、さまざまな医療機器の冷却剤として重要な役割を担ってます。不足すれば医療機器の使用は限られ、患者の診断に大きな影響を及ぼすことになります。

とはいえ、MRIは閉ざされた空間の中で液体ヘリウムを巡回させて使用するため、ヘリウムガスの漏れは最小限に抑えられています。液体ヘリウムを追加しなければならない頻度は多くないので、ヘリウムガス不足のインパクトは比較的少ないといえるでしょう。昨今ではヘリウムガスの99%をリサイクルできるMRIも開発されており、医療業界における対策は着実に進められています。※3

No Laughing Matter: The World Is Running Out Of Helium, But It Won’t Hold These MRI Engineers Down

日本の学会がヘリウムガスの安定供給を求めて緊急声明を発表したように、アメリカの研究開発業界においてもヘリウムガス不足は重要な問題です。絶対零度近い温度を保てるヘリウムガスが入手不可となれば、それまで積み上げてきた研究データが全て無駄になる可能性も少なくありません。

しかし、薬物に対するガンの反応を研究しているMarquette大学の物理学教授Brian Bennett氏は、悲観することはないといいます。「実は地球には、まだたくさんのヘリウムガスが眠っています。ただ既存の貯蔵施設のストックが減ってきているだけのこと。今後必要なのは、採取方法の精度を上げるか、新しいソースを見つけることなのです。」

彼の大学では、ヘリウムガス不足への対策としてリサイクルシステムを導入。他の大学や企業でもリサイクルシステムの導入や供給元との長期契約によって、ヘリウムガスが安定して供給されるよう対策を取っています。※4

米国ホームパーティー業界におけるヘリウムガス不足の影響と対策

今回のヘリウムガス不足を受け、パーティープランナーやバルーンショップはヘリウムガスの高騰にさらされており、特に小さなショップほど影響の波は大きくなってしまっているのが現状です。

ワシントン州のパーティーショップオーナーは、インタビューに対し「2019年1月、2月、3月とヘリウムガスの値上げが続きました。1タンク$130だったのが、今や$275まで値上がりし、ビジネスに大きなインパクトを受けている状態です」と回答。また、今回開店以来初めてバルーンを値上げしたというショップオーナーもいました。

その一方、多店舗展開しているZurchersといったパーティーグッズストアのチェーン店では、ヘリウムガスの供給は例年よりも減っているものの深刻ではなく、バルーンの値段も変更していないと回答しています。ZurchersのストアマネージャーMinda Bates氏は、「ヘリウムガスの卸売業者たちは、今回の問題は一時的なものであると考えているようです。同様の騒ぎは6年ほど前にもありました。その時は約1年で元通りになりましたから、今回もそうなるのではないかと予想しています」と答えています。

現在、米国の多くのパーティーショップやパーティープランナーは、ヘリウムガスを使わないバルーンのディスプレイ方法を積極的に採用しています。ヘリウムバルーンに代わり空気で膨らませたバルーンでアーチやセンターピースを制作するなど対応に追われています。※5

2020年以降にヘリウムガス不足は解消する見通し

アメリカの一部企業や科学界では、すでにヘリウムガスをリサイクルするシステムを導入しています。使用すれば100%近くのリサイクルが可能とされており、安定した供給が実現するとあって注目を集めています。

Bennett教授は、今後の見通しについて次のように述べています。「現在、世界中でヘリウムガスを採掘できるフィールドが発見されています。そのため、短い期間に限れば需要がひっ迫した状態が今しばらく続くことも考えられますが、永久にヘリウムガスがなくなるという心配はしなくて大丈夫でしょう。」※6

アメリカで新しい採掘先の調査が着々と進められている一方、来年以降はカタールやロシアにおけるヘリウムガス輸出量の増加も予想されています。今回のヘリウムガス不足は世界各国に波紋を広げましたが、上記のような理由から、2020年以降は状況が好転するだろうと考えられています。

次回はヘリウムガス不足に対する当社の取り組みをご紹介いたします。

ヘリウムガス不足に対するアムスキャン・ジャパンの取り組み

 

【参考・出典】
※1   <CBC News >(YouTube)    Explaining the global helium shortage

※2   <KTVB>    Helium shortage inflates demand nationwide, including in Idaho

※3    <USA Today>Not just balloons: Helium shortage may deflate MRIs, airbags and research

<GE Reports> No Laughing Matter: The World Is Running Out Of Helium, But It Won’t Hold These MRI Engineers Down  本文参照

<Rocky Moutain Air Solutions>  Helium Shortage Effects on MRI Machines

※4  <WLOX>  Global helium shortage inflates more than just cost of balloons

<FOX6> We need to recycle that helium:’ Helium shortage not just impacting party stores

※5  <NJTV NEWS>  Global helium shortage will affect more than just your next party  本文参照

※6   <CNBC> Helium is in short supply, hitting balloons and scientific research

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